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(短期連載:第4話)「報告 アフリカ現場体験26年~中国・アフリカ・国連」

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第四話 中国のアフリカ進出
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(写真:コンゴ民主共和国地図) ※参考:コンゴ民主共和国はどんな国?

▼中国のアフリカ進出

私は、眼のあたりに中国の脅威を感じながら、2005年にアンゴラを去りました。昨今、中国のアフリカ進出はめざましく、数字を見ると、一目瞭然です。アフリカは、アンゴラの例のように、戦争・紛争が続いた国の多いところです。なぜでしょうか?、それは大量に埋蔵されている資源のためです。以前は米ソが、そして冷戦後はアフリカ諸国間での利権紛争です。典型的なケースは、レア・メタルの「コバルト」と、携帯電話やDVDやパソコンの、タンタルコンデンサーに不可欠な「タンタル資源」を持つ、「コンゴ民主共和国」をめぐる、ウガンダ・ルワンダ対コンゴ・ジンバブエ・アンゴラの争いです。そして現在は、ここに中国が深く関与しています。

タンタル(コルタン)の世界の埋蔵量はコンゴが80%も保有していると言われます。コンゴはその資源故に、第二代国連事務総長のダグ・ハマーショルド氏(1961-1961)が、1961年の9月にカタンガのコンゴ動乱で亡くなった原因の国です。それに、コンゴは、現在のアフリカの国境線を決めた、1984~85年のベルリンでの、アフリカ分割会議の発端になった場所で、レオポルド2世と、冒険家スタンリーが、ベルリンで、ビスマルクに、コンゴの領土を私有地にするように、要請したところです。

アフリカは資源の宝庫です。世界の金の25%、白金の75%、ダイアモンド50%、コバルト50%、クローム50%、ボーキサイト25%、銅5%、石油8%の埋蔵量を有しています。「はじめに」でもお話したように、コルタン、白金、クローム、コバルト無しには、IT産業、自動車産業は成り立ちません。一方アフリカは、世界貿易に占める割合はわずか2%以下で、アフリカの総人口の半分は、1ドル以下で生活する貧困、HIV/AIDSの感染者が世界の70%、内戦、難民、汚職と問題を抱える大陸です。資源が、社会開発の足かせになっています。アフリカで最大の石油大国のナイジェリアでは、貧困者は石油のことを「悪魔のふん」と呼んで、石油の資源が一向に、自分たちの生活の改善になっていないことを不満に思っているようです。


(写真:アフリカの豊富な天然資源) ※参考:岩井証券:アフリカ大陸の高成長を支えるキーワードページより

▼貿易額は20年間で100倍に

中国のアフリカとの貿易額を見てみますと、その進出は驚く程です。
1989年には、わずか10億ドルであった額が10年後の1999年には2倍の20億ドル、そして、2005年には400億ドル、2010年には、1000億ドルと予想されます。この20年間で、なんと100倍の伸びです。(因みにその間、インドは40倍以上の伸び)アフリカは、その植民地の歴史から、1960年代のアフリカ独立後も、宗主国との結びつきが強く、特に、東アフリカ・南部アフリカは英国、西アフリカはフランスの影響力が際立っておりました。中国の貿易額は、いまや英国を抜いて、米国・フランスに次いで、3番目に躍り出ています。フランスを抜くのも、時間の問題と言われております。

▼中国のアフリカ進出の動機

では、なぜ中国のアフリカ進出が急速に進んだのでしょうか?中国側とアフリカ側から、その理由を説明しましょう。
中国は1980年には、アジアではインドネシアに次ぐ石油の輸出国でした。私は1978~79年に、ブラジル石油開発公団の貿易会社東京事務所でマネージャーをしておりました。そのとき、中国の石油とブラジルの鉄鉱石のバーター・トレードの仲介をしていましたので、中国は石油の輸出で外貨を稼いでいた印象を持っています。その後、中国は急激な経済発展のもとで、1996年以降、石油の輸入に頼らざるをえなくなりました。2005年には、日本を追い抜いて、世界で2番目の石油の輸入国です。


(写真:アフリカの地方の給油所)

▼2008年の食糧暴動は中国の経済発展が大きく影響

1997年の中国の輸入額の17%はアフリカからでしたが、2004年には29%、そして、2007年には31%と、年々アフリカの石油の割合が増えております。中国の石油輸入のビッグ・スリーは、アンゴラ、サウジアラビアとイランです。2005年には、ナイジェリアの石油採掘に23億ドルの投資をしました。1996年の一日当たりの石油消費は390万バーレルでしたが、2006年には、ほぼ倍の650万バーレルだそうです。2008年には、世界的に原油価格の値上がりそして食糧価格が異常に高騰し、発展途上国、特に、アフリカ諸国(セネガル、モーリタニア、カメルーン、ケニア、他)での値上げ反対のストライキ・暴動が起きました。その原因の一部に、中国の経済発展が、大きな影響を与えたことが指摘されています。つまり、中国での需要が大幅に増加して、供給を追い抜いたため、世界的な食糧バランスにも影響を与えたわけです。2008年8月に開かれた洞爺湖サミットでは、そのため、ご存知のように、3F(Fuel、Food、 Finance:燃料、食糧、財政支援策)が話し合われました。

▼狙いは石油とレアメタル

2006年の統計に依りますと、アフリカからの輸入は、アンゴラ(アフリカ第3位の石油輸出国;38%)、南アフリカ(レア・メタルの世界有数の輸出国;14%)、赤道ギニア(9%)、スーダン(7%)の順です。現在は問題を抱える戦争の続くコンゴ、宗教問題のナイジェリアの比率が高まっています。第三話でお話ししたアンゴラは2002年まで、40年以上にわたる国内戦争を続けてきた国で、スーダンはご存知のように、未だ、内戦が続く国ですが、1日の産油量の60%は中国向けです。もちろんパイプ・ラインは中国が建設したものですが・・・。赤道ギニアはフレデリック・フォーサイスの「戦争の犬たち」の舞台になったところで、2005年にはサッチャー元英国首相の息子が、クーデター未遂事件に関与したところです。


(写真:レアメタルが描かれた切手1)


(写真:レアメタルが描かれた切手2)

次回の第五話では、もう少し、中国のアフリカ戦略の詳細を述べてみたいと思います。


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 <筆者近影>
 松村裕幸(上智大学外国語学部ポルトガル語学科1970年卒)
 前WFP(国連世界食糧計画)ギニア・ビサウ代表
 第12回(2002年)コムソフィア賞受賞
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カテゴリー:Uncategorized
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